如月桜が燃え、総次郎は実はすごい人である。

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<落ち着いたのだ?> <お前たちは本当に仲が良いな。> 月が少し傾くまで続いた二人の言い合いが一段落し、放つ言葉の矢がとりあえずは尽きたような時に道返玉と玉藻は声を出した。 <で、そろそろ話していただけますか?浅葱、貴方が姉と言ったあの気持ち悪い気配を持った女は誰ですか?> 呆れる二人をよそに、呆れに少しの苛立ちを含めた河伯が話を進めるべく話す。 「あの人は、私の姉です。…実の。血の繋がった…私の村を滅ぼした姉です。」 <村を滅ぼしたというのは少し気になりますね。> <いくら浅葱様の姉でも私の仲間を傷つけたことは許せないわ!> 浅葱の話の物騒な部分に眉を顰める河伯。 木花知流姫に関しては、二人の喧嘩が一段落し、すぐに浅葱に背後から抱きついてむぎゅっと抱きしめながら怒りの言葉を吐き出した。 道返玉は何やらうつむいて思案をしていて、何も言わない。 玉藻、宇迦之御魂神、白夜に関しては、そのことを既に知っていたため厳しい顔で事実を受け止めている。 四方に四神、天井に巨大な龍と麒麟が描かれて、中にいるものを威圧する社の中にしばし沈黙のみが漂う。 その重すぎる沈黙を破ったのは、河伯だった。 <加えて、お聞きします。貴方のその姉は…貴方と同じ陰陽師の血を引き、素質がある者ですか。> 「はい。七年前の時点では、私よりはるかに霊力が高く、術の知識も豊富でした。」 <なら、ますます状況は深刻ですね。> 浅葱の言葉に、浅葱と白夜以外の眉がさらに深く顰められる。 <白夜、貴方は知っているでしょう?常闇皇のことを。> <あぁ。確か、国づくりの残り闇の塊だったか?> はるか昔、伊邪那美と伊奘諾が何もない闇が混ざり合うだけだった世界に国を作った。これがこの国の始まり。 だが、全ての闇を使えるわけがない。 小さな闇のかけらはいたるところに残り、それは一つの妖怪となった。 それが常闇皇。 <彼奴の封印がこの間解かれた。><はぁあ!?出雲の大社にあったんじゃねぇのかよ!> <それに関しては、済まぬとしか言えぬ…神無月を狙われたのだ。我々が宴会で騒ぐうちに…。> 宇迦之御魂神の済まなそうな顔に白夜は何も言えなくなる。 だが…。 「それと姉に何の関係が?いくら姉でも神様を欺いて封印を解くなんて芸当できるとは思えません。」
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