如月桜が燃え、総次郎は実はすごい人である。

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<だとしてもだ…封印に残っていたのですよ。人間の、しかも陰陽師の痕跡が。> 宇迦之御魂神の苦虫を噛み潰したような表情をみて浅葱は考える。 (あの禍々しい雰囲気が常闇皇なら…少し納得がいく。) <八百万の神が人間に一泡吹かされたわけだ。そりゃお上がただの火付けに、しかも、素戔嗚がいる街に九十九神を呼んだのか納得がいくなぁ。> 白夜がケタケタと笑う。 <笑い事ではあるまい。封印を解いた本人が京に現れたということは、また昔のように荒れるぞ?清春に執着しておるお前には無関係とは言えんと思うが?> 宇迦之御魂神が呆れたように言う。 <清春の名を出すな。> 白夜は一転して不機嫌な顔になると宇迦之御魂神を睨みつける。 (清春って誰だろうか。) 浅葱は首を傾げる。 <そういえば、酒呑はどこなのだ?> ふと思い出したように道返玉が顔を上げていう。 <はぁ?あいつも来てるのか??> <残念ながら、着てますよ。ついでに狐狸も。後は…土蜘蛛も来るらしいです。> <あの菓子馬鹿は京を壊す気か??> やれやれと言う河伯。 目を開いて驚く白夜。宇迦之御魂神も同意と言わんばかりに頷いている。 <そういえば、花見に行くと言うて出て行ったぞ?> 玉藻がふと思い出したようにつぶやく。 <<彼奴らは馬鹿だ??>> 河伯と白夜が同時に叫ぶ。 <白夜、すぐに出ますよ、人間に見つかったら厄介どころじゃすみません。><浅葱、お前もう話すことないよな?じゃあ、行くぞ??あの馬鹿酒飲みどもが暴れる前に止める。><あー!私も行く!>「おお、おい!腕を引くな!木花知流姫!くびをしめないで!」 わたわたと慌て、ドタバタと音を立てて社を出て行く白夜、浅葱、河伯、木花知流姫。 <平和よのぉ。><えぇ。><なのだな。> <茶でも立てるかぇ?><良いのか。玉藻。なら、頼む。><頼むのだ。> 社に残った宇迦之御魂神、玉藻、道返玉は互いにため息を着くと、茶の準備をし始めた。
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