如月桜が燃え、総次郎は実はすごい人である。

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<おっまえは!わかってんのか!?人間にホイホイ姿見られたら余計ややこしいことなんだろうが!この馬鹿鬼!!> <まったく、いつものこととは言え、鬼は元々人間だった輩が多いのですから、こんな必殺鬼殺しなんて大量に飲ませたらこうなることくらい、いい加減学びなさい!> 浅葱達が賀茂川河原に辿り着くも、時すでに遅し。 着いた瞬間に最後の生存者が酒呑童子の圧政に屈し、河原に広がる阿鼻叫喚に加わってしまった。 (賽の河原ってこんな感じなのかね…。) 酒はほどほどにとは言ったもので、少しだけ飲むにはすっきりとした味わいの中にちゃんとお米の味があって、飲みやすく美味しい日本酒である必殺鬼殺し。酒呑童子が愛飲するこの酒は、最初こそ飲みやすいものの、すっきりとしている割に物凄く強いお酒である。 故に、河原には酒呑童子の眷族である鬼達と、狐狸の眷族である狸や狐の妖達が酔いつぶれて倒れている。 もしくは、完全に酒が回り切っていないものは、青い顔をして川の方を向いている。 中には人に化けるのも忘れ、丸い腹を出してイビキをかいている狸や、着ていたであろう着物を脱ぎ捨ててしまって、ご婦人方の目に毒な格好の鬼もいる。 なんとも、地獄の豪卒が聞いて呆れる光景である。 その光景を作り出した張本人の大男と共犯者の少年は、河伯と白夜の前に酔いも吹き飛んだらしく石が足に食い込んで痛いであろう河原で正座をしておとなしく説教に耳を傾けている。 願わくば、この説教が馬の耳に念仏にならないことを願うばかりだ。 浅葱は、とりあえず目に毒な者たちに彼らの服を被せる。 木花知流姫は、目に毒だからと状況が見えるが、個人がどんな格好かは見えない位置にいてもらっている。
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