如月桜が燃え、総次郎は実はすごい人である。

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<ねぇー!河伯ー、私いつまでこんな遠くにいなきゃ行けないのー?> しばらく河伯の説教が続いていたが、目に毒な為離れたところにいた木花知流姫がしびれを切らして叫ぶ。仲間はずれにされたことが不服らしく、プクッと頬を膨らませている。 <木花知流、来ても大丈夫ですよ。ただ、浅葱君のそばを離れないでくださいね、まだ厄介な酔いどれどもがいますから。> 河伯は、ガミガミと効果音がつきそうな説教を中断して言う。白夜は怒ることに飽きたらしくその辺に転がった酔っ払いを木の枝で突ついて遊んでいる。 <はーい。> 木花知流姫は、河伯の言うとおり浅葱のそばにかけて行く。 「とりあえず私は早く帰りたいのだけどね…。」 浅葱はやって来た木花知流姫に愚痴をこぼす。 時間は寅三つ時、人間の浅葱には普通に眠い時間だ。 ましてや、浅葱は朝から普通に仕事をしなくてはならない。 だが、このまま妖怪共を放置してろくなことにならなかった試しがない。 せめてこの酔っ払いをなんとかするまではと気合いを入れて眠気と戦う浅葱。 <あれ?浅葱様、あれって…。> 浅葱がぼんやりと遠くを見ながら眠気に耐えていると、木花知流姫が静かに流れる川に何かを見つけたようで、浅葱の着物の裾を引っ張る。 「何かありまし…。」 何があったのだろうと聞きながら彼女が指差す方をみた浅葱の口から疑問文が最後まで出ることはなかった。 真っ黒の川に浮かぶ何か。 普通の人なら見えないだろうが、闇に慣れた浅葱の目には川に浮かぶ箱と、それを背負っている人間の姿が見えていた。 (辻斬りか?まぁ、どうせ死んで…) ガボッ 浅葱が死体から目を話そうとした瞬間死体だと思っていたそれが水を吐く音が鋭い浅葱の耳に聞こえた。 「木花知流姫!河伯を呼んでください!」 浅葱はそう叫ぶと川にバシャバシャと踏み込む。 いくら桜が咲いているとはいえ、夜になると冷え込む季節。川の水は浅葱の膝までまとわりつき、そこから暖かさをどんどん奪って行く。 それを気にせず箱に近ずくと、沈んでいるのは浅葱とそう歳の変わらなさそうな男だった。
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