如月桜が燃え、総次郎は実はすごい人である。

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「誰に殴られたとか覚えてないいのか?」 まだある程度の距離をとったまま浅葱が尋ねる。 「んー…たしかぁ……女だったかな…こー…グッとくるいい女だったんだよー。看取れれたらガツンとやられたわ。」 アハハハと続ける佐之助。 <女ってまるで浅葱くんのお姉さんみたいですね。佐之助に気配を気づかれないなんて人間業ですか?> 何故か頭を押さえた狐狸を伴ってこちらに来た河伯が言う。 酔っ払い妖達はこちらも何故か二本しかないはずの角を三本にした酒呑童子がお手玉のように川に放り込んでいる。 事情を知らなければ酒呑童子はひどいやつだが、実は川は河伯の作る空間に繋がっている。 今そこには河伯の眷属である河童達が待機していて放り込まれる妖怪達を解放しているのだ。 決して酒呑童子が八つ当たりしているわけではないと強調しておきたい。 「どんな女なんだ?」 「んー…どんなって…美人だよ、美人。粋な女をそのまんま形にしたみたいな女ー…あー…鬼火みたいなの操ってたな。ありゃなかなか高度だと思ったんだよー。」 一人頷く佐之助。 <それ、火付けの下手人じゃね?> 「姉さんだよ、完全に。」 白夜がにやけ、浅葱が頭を抱える。 寄り道での騒動から、蘇芳が火付けの下手人と言うのは容易に想像できる。 何と言っても浅葱に言ったことを踏まえると間違いない。 まぁ、蘇芳に予知の類の力があれば別だが。 <でも、念付きの簪なんか捕ってなにに使うのかしらね。> 「いや、一応ヤバイ奴には内からも外からもなにもできないようにはしてあるからな、簪はそんなにヤバイもんじゃなかったからそんなに厳重には管理してなかったんだよな。だから、取りたくてもたぶん取れなかったから仕方なく簪取って行ったんじゃないか?」
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