如月桜が燃え、総次郎は実はすごい人である。

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「眠い。」 「ちょっ、浅葱大丈夫?なんか殺伐としてない?」 不機嫌な顔をしてひたすら水撒きをしている浅葱に偶々竹箒を持って店から出てきた梅吉は声をかけた。 「大丈夫ですよ、梅吉。」 「いや、なんか地面が大丈夫じゃ無いことになってるからな。」 浅葱が水をまいた地面は水がまかれた形にえぐれて穴が出来ている。 「これは…ただの偶然です。」 浅葱が言う。 そういいながら蒔いた水はたまたま通りかかった哀れな猫に頭かから掛かり、可哀想な猫は全身が二分の一にしぼみ、慌てて逃げて行った。 「…浅葱、俺それ代わるわ。掃き掃除やれ。更なる被害が出る。」 梅吉はそれを見て無言で浅葱から桶と杓子を取り上げる。 そして、自分の竹箒を浅葱に渡す。 「わかりました。」 浅葱は何故梅吉に取り上げられたのかわからないと言わんばかりに不満げな顔をしながら、竹箒を受け取る。 「んじゃ、俺水組み直してくるから、そこら辺ちゃんとはいといてくれよ!」 「へぃ、任せてくださいな。」 浅葱の笑顔に一抹の不安を覚えながら梅吉は店の裏の井戸に水を組み直しに行った。 「うーん…梅吉、どうしたんでしたんだろうねぇ…。」 <ケケケ…とりあえず周りとあそこの屋根の上で必死に毛づくろいしてる猫を見てからその言葉を言ったらどうだい?> 白夜の言葉にとりあえず屋根の上を見る浅葱。 浅葱に見られた猫は体を舐めるのをやめて屋根の向こうに慌てて逃げていった。 「なんなんでしょうね?」 浅葱は何も察することなく首を傾げ、手渡された竹箒を動かし始めた。
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