如月桜が燃え、総次郎は実はすごい人である。

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「浅葱、本当今日どうしたんだ?」 「だから私は至って普通ですって。」 「まずお前の周りを見てから言おうか…なんで草の根とか岩とかその辺に転がってるんだ?なぜにここら辺だけ若干窪んでるんだ?」 水を汲んで戻った梅吉が見たのは浅葱によって作られた完全に乾いていないであろう水を含んだ茶色い地面と、落ち葉の山のように固められた小石や岩、草とその根の山だった。 浅葱は呆れ果てる梅吉に又もや首をかしげる。 「…もう俺は何も言うまい。浅葱、とりあえずその山なんとかしといて。」 そういうと梅吉は頭を抱えてこの地面をどうしようかと思案を始めた。 <馬鹿浅葱、お前制御って言葉を忘れてるぞ。> 「うーん…いつも通りのつもりなんだけどな…。」 <ケケケケケケ。> 梅吉に仕事を奪われた浅葱は仕方なく店の中に戻る。 <キュピー、ケペー。> 店に入ると、昼間は客の喧騒にかき消されている音が浅葱の耳に聞こえてきた。 この新種の怪物の鳴き声のような音を出しながら寝ているのは、ウリ吉。梅吉とは一字違いだが、姿等は全く違う。ウリ吉は神格化された妖怪、愛宕山の太郎坊の下っ端で、先代が無明息災を祈願しに愛宕山に参った時に買ってきたらしい。普通なら一年に一度交換しなくてはならないはずの札だが、ウリ吉の様子を見る限りまだまだ現役そうだ。 …いや、浅葱はウリ吉が寝ているところしか見たことがないので、本当に現役かは謎である。 <こいつは一体何時になればおきるんだろぅね?> 「さぁ?火事でも起きれば起きるんじゃないかぃ?」 <本当大丈夫か?そんな物騒なこと言って。お客に余計なこと言うなよ、まぁ、俺は面白いから良いか。ケケケ。> 白夜はひとしきり笑う。浅葱は浅葱でウリ吉を羨ましそうに一瞥して、自分の仕事である開店準備のため机を持ち上げた。
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