如月桜が燃え、総次郎は実はすごい人である。

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総二郎は宣言通り昼過ぎに現れると、店の儲けには有難い、見る側は胸焼けを起こしそうな量の菓子を注文した後、注文を取った浅葱に声をかけた。 「浅葱さん、本当今日はどうしたんですか?何か変なものでも食べましたか?」 「いえ、少し寝不足でして。」 浅葱は開店と同時に繰り返されてきた同じやり取りに内心うんざりしながら答えた。 (本当今日は何なんだろうか?ちょっと位寝ないことなんて普通なのになぁ…。) <あー、浅葱?お前本当疲れてんじゃね?手元見てみ。> 白夜に言われて手元を見る浅葱。そしてすぐに赤面して店の奥に戻る。 「う、う、梅吉それにお嬢様も。なんで言ってくれなかったんだぃ。」 「いやぁ、面白かったから。」 「えぇ、いつ気づくかと思うと面白くて。」 二人してクスクスと笑いあう姿に恥ずかしさよりも呆れが勝った浅葱はあいた机を下げるために持っていたお盆ではなく、しゃもじを机に戻した。このしゃもじは餡を炊くときに使う柄のかなり長いものだ。 本当、なんで気がつかなかったのだろう。完全に変な人じゃないか…。 浅葱は自分がこれを持って店の中をウロウロしている姿を想像してさらに赤面する。 確かにそんな店員がいたら大抵の客は首をひねるか、回れ右をするだろう。
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