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「はぁ、良いのかなぁ…休んじゃって。しかも半刻も。」
昼餉の握り飯をかじりながら浅葱はため息をつく。
梅吉、和彦と共同で使っている奥の部屋には当たり前だが、浅葱以外は誰もいない。
<良いじゃないか別に。昔は鞍馬の奴が休憩って言っただけで大喜びしてたんだから。ちょっとは喜べよ。>
そこに響く先ほどの声。
「いや…白夜、あれと一緒にしちゃいけないだろ。」
<そうか?それより、俺にも何かよこせ。>
そう言って浅葱の懐からピョンと飛び出した豆粒くらいの白狐がみるみる柴犬くらいの大きさになる。
「白夜!何してるんだ!誰かに見つかったらどうするんだい?」
白狐に慌てずにそれを目撃されるかもしれないことに慌てる浅葱。
<大丈夫だろ。それより飯。>
慌てる浅葱をよそにそう言うと白狐-白夜はあくびを一つすると起用に前足で浅葱の握り飯を一つ奪う。
そして、両方の前足で器用にそれを抱えるとハグハグと音を立ててそれにかじり付いた。
「まったく…少しは慎重になるって事をしてくれよ。」
<慎重になったって、ばれるときはばれるんだよ、ケケケ。チッ、梅干しか…せめて天ぷらでも入れとけよ。>
期限良さげに笑ったと思えば、握り飯の中の梅干しが気に入らなかったらしくブツブツと文句を言う白夜。
その姿はまさしく妖怪と言うにふさわしかった。
これでたいていの妖怪より格上だからわからないんだよな。
浅葱は目の前の狐と小さいときに祖母から聞かされたり、自分で見た妖怪とを比べる。
明らかに白夜の方が弱そうだが、彼曰くこれは浅葱のそばにいやすい為にとっている姿で、本当の姿はまったく違うらしい。まぁ、平気で嘘を言う白夜の事だからどこまで本当かはわからない。
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