第1章

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A支社は40人程の社員がおり、半分以上を女性が占めていた。 教育係など初めてなのだろう。戸惑いがちに、まばらに拍手が起こる。 そんな中、私は支社内を観察していた。 そしてすぐに資料にあった女性を見つけると、その女性と目が合った。 彼女は拍手などする様子はなく、私達を凝視していた。 「うん。問題ないわね。何か質問はある?」 「い、いえ。ありません」 私と新井さんは支社内にある、小さな空き部屋を借り、教育室としていた。 長方形の部屋の奥には衝立があり、その中にテーブルを挟みソファが2つある。今の会話はそこから成されている。 問題のある社員なら付きっきりで教育するのだが、今回は全員の教育という事だったので部屋を借り、そこで1人ずつ面談をする。 それはマニュアル通りで、少なくないパターンだ。その場合はこうして2人の教育係がつくのも然りだ。 面談内容は、成績から始まり、接待の仕方、出入りする企業があるかどうか、クレームを受けた事があるか、などである。 それが面倒で嫌いだから新井さんを無理矢理引っ張り込んだなんて、断じてない。…断じて。
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