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「失礼します」
特に問題のある社員はなく、滞りなく進む面談の中、彼女は現れた。
私より少し高い背丈。
濃い化粧で原型の分からない顔にギラギラしたピアス、髪は金に近い茶髪を腰あたりまで伸ばしている。
更に白のカッターシャツはボタンをギリギリまで留めておらず、胸の谷間をこれでもかと強調している。
スカートも短すぎて、まるでどこぞの夜の商売女のようだ。
ーー深沢りりあ。22歳。
先程拍手もせず私達を凝視していた彼女は、私が目をつけていた人物でもあった。
「…深沢さんね。ほとんど規律違反よ」
「どこがですか?」
けばけばしい顔とは裏腹の可愛らしい声で、何がいけないのか分からないとでも言いたげな口調で問う彼女。
「化粧、髪、ピアス、シャツ、スカート全て」
「でも部長は何も言いませんよ」
「規律は部長の決める物ではないわ」
「でもここでは部長がトップです」
やたらに部長を強調して駄々をこねる子供のような深沢に、新井さんは次第に口調が強くなる。
「そういう問題じゃないでしょ。この会社の名前を背負う以上は、会社の規定を守ってもらわないと」
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