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「皐月ちゃん…言い過ぎ」
やっと去って行った深沢を見送った後、新井さんは苦笑しながらそう言った。
「私は新井さん程優しくはありませんからね。世間知らずのお子様には丁度いい程の薬ですよ」
「まぁ、私は今回は皐月ちゃんのサポートで来たから文句は言わないけどね」
そうなのだ。今回は私はサポート、兼勉強と言う名目だが、本当は逆で私が指名され新井さんがサポート役として来ているのだ。
なぜそんな嘘をついたかというのも、今回の指命には裏があるような気がしていたから。
教育係というのは、大体が支社の部長からの依頼が多いが、ここA社は違っていた。
ここの依頼は隣町の支社、私の旦那ーー誠の上司、長谷川忍部長からだったのだ。
長谷川部長は顎ヒゲの似合うダンディーな39歳だ。
私は彼を“顎ヒゲ野郎”という貶しを、愛というオブラートで包んだ愛称で“顎”と呼んでいる。
2年程前に知り合い、私が教育係をするキッカケになった人で、人徳もあり本社からも信頼の厚い人物だ。
彼が依頼してきたという事は、何か引っ掛かるものがあったのだろう。
そして私に教育係という名目で中で異常がないか見てほしいといった所だろう。
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