第1章

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「名前、全員覚えているんですか?」 「まあ、大体は」 「凄いですね。俺なんか皐月さんの名前を思い出すのに時間かかったのに」 「仕事柄、そうなります」 案内してくれた喫煙所でタバコを吸いながら話をする森田は、スマートに話を持って来た。 さすが営業歴5年と言ったところか。 「俺もそれ早くマスターしなきゃ」 「ええ。意識さえしていればすぐに出来ますよ」 爽やかな笑顔には、八重歯が光っている。 27歳と年の割りに無邪気な森田の笑顔に自然と笑みが漏れた。 「ところで、教育係って仕事に関わる事だけしか質問しちゃいけないんですか?」 「まぁ、基本はそうですね。パソコンの使い方から人間関係まで幅は広いですが」 「そうですか」 「…何か?」 一瞬表情の曇った森田に気付かない私ではない。 疑問を口にすると、笑顔で誤魔化され、彼は去って行った。 …んー?
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