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「深沢りりあ職員の事なのですが。あの下品で社の汚点になるような風貌を辞めるよう注意していただけませんか」
さっさと要件を済ませたいが為に単刀直入に言う私に、上條部長は一瞬動きを止めた。
「…君の噂は聞いていたが、ここまでハッキリ言う女性だったとは」
軽く笑い、私に向ける目は、“好奇”だ。
本社以外の職員にはそれほど広まってはいないが、やはり部長クラスには流れているのだろう。
「彼女は貴方が仰るなら改めると言っていました」
「そうか。可愛い子だね」
そう言うと上條部長はすっと立ち上がり、室内をゆっくり歩き始めた。
「君には会いたいと思っていたんだよ。気が強い上に、正論を叩きつけて相手に隙を与えないやり方、僕は好きだよ」
「それは光栄です」
話しながらゆるゆると距離を縮める上條部長。
私は前に目を向けたまま、その気配だけを追う。
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