289人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日。
深沢りりあは、言われた通りに就業規則に従った風貌で出社した。
「すみませんでした」
そう言う深沢は、私に頭を深く下げた。
薄化粧に、ブラウンに抑えた髪色は、後ろで1つに束ねられ、黒のシャツとパンツスーツに身を包んでいる。
私はそれを無言で見つめた。その視線に、彼女は緊張した面持ちで俯いていた。
「ふぅん…」
彼女の目の前に立ち、またも不躾な視線を向ける私。
だがそうするのも仕方がない。今回は逆の意味で彼女は変わっていたのだから。
「そちらの方が、清楚で可愛らしいですね。見違えましたよ。うん」
私の言葉に顔を上げる深沢。
それは正直な感想だった。昨日の彼女とは180度違う見栄えは、営業をするに当たって、文句1つない上品さだ。
「あ、ありがとうございます?」
「なぜ聞くのですか。正直な感想なのだから喜びなさい。私はお世辞など言いません」
「あ、はい。ありがとうございます」
「私達がいなくなってもその可愛らしい姿でいて欲しいものですね」
その言葉に深沢はまた頭を下げると、部屋を去って行った。
最初のコメントを投稿しよう!