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上條部長に、特に不振な様子はない。だがそれがまた逆に怪しい気がしてならない。
「…申し訳ございません。何でもありません」
「待って皐月さん」
部長室を後にしようとする私を呼び止める上條部長は柔らかい笑顔だ。
「何でしょうか」
「君はこの支社をどう思う?」
「どこにでもある、普通の支社だと思います」
「そうか。その通り、普通の支社だよ」
私はその言葉に返事はせず、一礼をしてその場を後にした。そして向かうは喫煙所。そこには面談を済ませた面々が数名いた。
「あれ、皐月さんもタバコ吸うんですね」
「お疲れ様です」
「今日は暑いですね」
彼らは気さくに話しかけてくれた。私もそれに当たり障りなく返した。
それから一週間。
見た目には、何事もなく平和な日々が続いた。だが私にとっては、違和感を拭えない日々だった。
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