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「桜。眠れない…?」
「…うん…」
隣で寝ていたハズの誠が、優しく語りかけて来た。私はそれに素直に答える。
それを聞くなり誠は、そっと私の体を抱き寄せてくれた。その温もりに安堵した私は、そのまま誠に寄り添う。
誠の腕の中で、私は彼らの顔を思い出す。正体の掴めない違和感から、全く解放される兆しはない。
「あの部長が何をしようが知ったらこっちゃないよ…でも」
私は誠の背中に手を回すと、ぎゅっ、と力を込める。誠もそれに答え、優しく頭を撫でてくれた。
「私は私の仕事をする。私は教育係として、あの子達が正しく働ける場所をキチンと確保する義務がある」
「分かった。なら、最後まで面倒を見てあげて」
「うん」
でも、無理はダメだよ…
その声は、夢の中で聞こえた気がした。
誠の腕の中は眠れない夜も、いつの間にか優しい眠りにつかせてくれる。
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