プロローグ

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「筋肉細胞から変化した電気細胞を持っているんだって。それが運動神経の刺激で興奮して放電するらしいよ。例えば身を守る時や補食する時」 「なるほど。電気ウナギも万能じゃないのな」 およそ夫婦らしからぬ会話をしながらソファで酒をたしなむ2人。 それでも私は、その心地よさにふと頭が浮くような感覚に襲われる。 「…桜、眠い?」 「…んー…まだ…」 「ふふ、いいよ寝て」 優しい旦那様は、また私をベッドまで運ぶつもりでいるらしい。 今日こそはと瞼を開けようと頑張るものの、やはりそれに打ち勝つ事は出来なかった。 「おやすみ、桜」 優しい声を聞きながら、意識が遠のくのを感じた。 ごめん、誠…… 言葉を発す事が出来たかは分からない。けれど彼は笑っているだろう。 『いいから寝なさい』 そう言いながら。
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