第1章

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「分かったからはい。次の支社」 「佐々木さん。ダイエットしないんですか?」 佐々木さんは、まだ春だと言うのに薄くなった頭から流れる汗を、一生懸命タオルで拭っている。 不快感はないが、私の三倍はありそうな腹回りに健康が心配になる。 「ふはっ、僕には必要ないよ」 「誰よりも貴方に必要ですよ。この前の健康診断で血圧に血糖値に体脂肪、メタボ、引っ掛かってたじゃないですか」 「…何で知ってるの」 「貴方の弱味を握っておく為です」 佐々木さんには以前私の個人情報を漏洩した前科があるので、同じ事を繰り返さない為に先手を打っておく。 「そ、それ、誰にも言わないでよ。差し入れが来なくなっちゃう」 「以前のような事をしなければ言いませんよ」 「あれは、ワサビ饅頭とワサビ茶でチャラでしょ!?僕本当に死ぬかと思ったんだから!」 「ワサビごときで死にませんよ」 どうやら佐々木さんの前科の際、私が饅頭のあんこをくり抜いてワサビを大量に入れお仕置きという名をつけた差し入れの事を言っているらしいが、アレはアレ。コレはコレだ。再犯防止の為には仕方ない。
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