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「1人でやれってかメタボハゲが」
「皐月ちゃん口に出てるわよ」
資料を読み終えた私が、心の中で佐々木さんへの暴言をつい口にした事に、隣のデスクの新井さんが素早く反応した。
「あぁ、失礼しました。何でもありません」
「次はどんな問題事?」
首を傾げる新井さんは、私より1つ上の34歳とは思えない程若く見える美形だ。私も大概童顔ではあるが、彼女程美しくはない、普通の童顔チビだ。
同じ教育係であり、1年先輩でもある。仕事のやり方は私よりは優しいものの、世間一般では厳しいと称される教育法だ。
「はぁ、また佐々木のハゲが……あ。…新井さん、今、教育の仕事入ってます?」
「ううん。今は入ってないわよ」
私は新井さんをじっ、と見つめると、ニヤリと黒い笑みを浮かべた。
ヒクリと口の端を引きつらせる新井さんの顔に、何とも言えない喜びを感じたのは私の心の内だけに閉じ込めておく事にしよう。
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