プロローグ

3/3
78人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
二、三度崖の上を旋回すると、ゆっくりと地面に降り立つ。 仲間達の祝福の声が俺を迎えてくれた。 そして、 「よくやった。それでこそ、我が息子だ。」 「本当に、本当に良かった…。」 俺の体を母の翼が、そして母の体ごと父の翼が包み込む。 今日、俺が乗り越えた試練は、言わば巣立ちの儀式。 数千年を生きるであろう俺の一生の、大人としての第一歩だ。 「フェオドアルテ=フィル。」 自分の倍近い父の翼で姿は見えないが…。 「ロラン=チフェ。」 俺が答えるより先に、父がその名を返す。 そして、俺を包んでいた翼をたたみ、厳かにその頭を垂れた。 次いで母が同じように頭を垂れ、俺の目にもその姿が映るようになる。 父よりも一回り程大きなその姿は、永い時を生きてきた貫禄を感じさせる。 「フェオドアルテ=フィルよ。よくぞ試練を乗り越えた。これでお主も我等がアベリオールの立派な一員じゃ。」 チフェは嬉しそうに目を細め、俺を褒め称えた。 「偉大なるロラン=チフェにお褒めのお言葉を賜り、感激至極でございます。」 労いの言葉に感謝を述べ、両親に倣い自分も頭を垂れる。 そんな俺の姿にチフェは一層目を細める。 「フェオドール、アルテミシア。お主らは本当に良い息子をもったな。」 と、独り言のように呟き、森に住む全ての仲間の耳に届く程の、張りのある声で高らかに宣言した。 「フェオドアルテ=フィルはアベリオールの試練を乗り越えた!明日、フェオドアルテ=フィルに更なる英知を、我等ドラグィルの原初は与えるだろう!」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!