第一章

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大人達が躾けのために良く口にした恐ろしい話。 “悪い子は魔物がやってきて大きな口で食べてしまうよ” (わたしは“わるい子”だから、すてられちゃったんだ。) その感情は、生きる意欲すら奪い、体中の力が抜けていく。それに逆らわず、そのままころりと仰向けに横たわる。 (わたしは、いらない子なんだ…。) 少女が生まれた村は貧しく、両親は朝から晩まで働いたが、決して生活は楽にならなかった。 それでも両親は、少女に多少の我慢は強いても、それに余りある愛情を注いでいたし、村の皆も同じように貧しいはずなのに、とても優しくしてくれた。 少なくとも、少女が村での生活に不満を感じることはなく、昨日までは幸せだった。それが、なぜこんなことになってしまったのか。 「どうして…?」 目に映るのは木々と空だけ。少女の問いかけに答えてくれる人はいない。 静かに零れる涙が柔らかな頬を伝い、耳をくすぐる。 「う…ふっ…。ううっ。ぐすっ…。」 ピリピリとした痛みを発する体を護るように、自分の腕で抱きしめる。 足首からはズキズキと鈍い痛みを感じるが、痛みに麻痺してしまったのか、最初のような激痛ではない。 それに、今は体よりも心のほうが痛かった。 どれくらい、そうして泣いていただろう。 いつしか少女は泣き疲れて眠ってしまい、空には太陽ではなく月が浮かんでいる。幸い満月が近く、森の中でも月明かりでいくらか明るさがある。 「つっ…!」 眠っていたせいで足首の怪我を忘れていた少女は、無意識に動かそうとして激痛に声を上げる。
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