狩り

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奴の姿が地平線の彼方に消えても、今度は走る事を止めなかった。 もっと、もっと遠くへ。奴が諦めて去る程に走り抜く。 ただ朝とは違い、照り付ける光が、脅威的に辺りを熱地に変える。走る程に体力を奪う。それも尋常では無い。 ウユキチは乾期が近い。このまま体力を奪われ続ければ、身体が危険だ。 走りながら鼻を効かせ、水の気配を探っては見たが、この辺りに水の痕跡は感じない。 脚を動かす度に息が乱れる。体から水を失う。喉がひりつく。目が乾く。 気が付けば、俺は走ると言うよりも、流す様に歩いていた。 奪われた体力を考えても、初めより距離を稼げては無いだろう。この暑さ。奴も諦めてくれたら良いが、期待は出来ない。 少しでも水分を摂らないと。 俺は立ち止まると、足元の草を口に入れた。渇いた喉が、軽く草の侵入を拒絶する。それを無理に飲み込んだ。 なるべく噛み砕き、すり潰して喉に流す。その作業を繰り返し、何とか渇きをごまかしてみる。 辺りは更に熱を帯び、視界も熱で霞んで見えた。 俺は草を噛み砕き、唾液で咀嚼を続けながら、ふらつく脚で、少しでも休める場所を求めて歩き出していた。
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