狩り

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蒸し暑い風が頬を抜け、それでも心地好さを感じる事が出来るのは何故だろう。 この大地に命生まれ、大地の土として没してゆく。長きに渡り繰り返し育まれて来た命の輪廻。その輪の一部で有る事の誇りが、そう想わせるのかもしれない。 遥かな地平から、神々しい程の光が朝を告げる。俺は朝露で濡れる草花で、喉の渇きを潤した。 光に照らされて、自身の影が足元に伸びると、大地に凛とした体躯が映し出される。 細く、でも頼もしい4本の脚。そこから更に黒い影が進むと、自慢の角がウユキチの平原を包み込む様に映える。 ひとしきり自分の影を愛でると、俺はレムの中に駆け出していた。 風が身体の熱を鎮める。 レムでは次々と目覚めた家族達が、朝の食事を始めていた。この辺りの草は若芽が多く、子供達にも食べやすい。 俺の登場は、食事の最中でも皆の視線が集って行く。皆が俺の姿に敬意をはらう。 ソレに応え、俺は首を伸ばし、高らかと頭の角を朝日に照らしては、悠然とレムの中を闊歩した。 雄はレムでも1番の俺の角を見ては萎縮し、雌は俺の角から溢れ出す男の威厳を感じては、自身が女として生まれた意味を感じる。
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