狩り

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レム全体がざわついた。 狙われている。皆が理解している。だが逃げる事が出来ない。 狙われている事は分かるのだが、相手の正確な位置が特定出来ない。不用意に逃げ出し、レムから離れてしまえば即奴らの餌食。 レムが俺の周りに集中した。不安から、互いが身を寄せ合い密集する。 相手が牙を持つ者なら、子供や、弱っている者を狙うが、奴らは型成りも思考も異形。 いつも個体の大きな者を優先に狙う。 つまり、今最も危険に晒されて居るのは、俺だ。 このレムで最も強く。最も雄々しい俺が、奴らの1番の獲物なのだ。 理解すると同時だった。 俺は、レムから離れると、自慢の4本の脚で地面を蹴って駆け出していた。 深い考えは無い。俺の胸の奥に有るマナがそうさせた。 俺達レムの家族は一心同体。個の命よりも全体の存続を優先にする。俺一人の命など、仲間達と比べれば塵芥(ちりあくた)とも等しいのだ。 考える事は必要無い。心のマナにただ従えば良い。 レムを離れた俺は、奴の姿を確認出来た。 後ろ脚だけで走り来る悪魔。重く冷徹な視線は俺だけに向けられている。 奴が追って来るのを確認すると、力の限りレムから離れて走り続けた。
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