狩り

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そう、追って来い。 お前の獲物は俺なのだろう。 俺は振り返らず、嗅覚を頼りに奴の動きを感知した。確かに着いて来ている。 ここから、俺と褐色の悪魔の命のやり取りが始まった。程よい緊張感に包まれながら、奴の追跡により、家族の無事を確信して安堵した。 走り際に、一瞬だけ後方に視線を向けと、奴の姿を観察する。 全身を体毛で覆わず、剥き出しの皮膚は正に異形。俺達よりも遥かに巨体。器用なバランスで走りながら何故か俊敏。 だが俺の脚力は、奴の脚力を優に上回る。 それもそのはず。俺の4本の脚は地面を的確に捕らえるが、奴らは後ろの2本脚だけで走る。追い付かれる事は無い。ただひたすらに走り続ければ良い。 次第に奴は、俺から距離を引き離される。褐色の悪魔。その巨体が小さく。更に小さく、最後には地平線の彼方へと消えて行った。 だが、姿は見えなくとも解る。奴はまだ俺を追って来ている。悪魔から放たれる、剥き出しの殺気が感じ取れる。 そう。戦いは今、始まったばかりなのだ。
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