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走り続けて数刻が過ぎた。
レムからかなり離れたが、奴の姿は勿論、匂いも、殺気すらも感じる事は無い。
時々立ち止まっては後方を確認するが、少し前まで感じ取れた奴の微かな気配は、今は微塵も感じる事は無く為っていた。
レムからも、だいぶ奴を引き離す事が出来たし、これで皆は無事に旅を続けられる。
ただ、俺が今から道を戻ったとしても、この広大なウユキチで、仲間と合流する事は難しい。
常にレムは移動している。
俺は近くの木陰まで行くと、座り込み身体を休める事にした。直ぐ側の草木にはまだ朝露が見える。喉の渇きを潤したいが、今は疲れた身体を休めるのが優先だ。
徐々に強さを増す朝日から逃れる様に、木陰の中で身体を丸めると、静かに目を閉じ仮眠を取る。
意識を深く沈めずに、いつでも動ける様に配慮しなければ為らない。
また、別の補食者に遭遇するとも限らない。
長距離を走り、火照った身体に涼しげな風が流れて行く。風の気配は、遥か彼方へと続いている。
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