0人が本棚に入れています
本棚に追加
生命のマナは不思議だ。
仲間の為に、自分の命の犠牲を厭わない。自身の存在よりも、種としての存続を優先させる。
ただそんな選択をしながらも、まだ生きようとしている俺は、マナの流れを受け入れながらも、その流れから脱却しようとしているのか。
───いや、生きればまた、マナの流れ。輪廻に加わる事が出来る。
たとえ死んでも、その肉体は型成りを変えて、ウユキチの大地、その一部として輪廻の一端を担う存在で有りつづける。
どちらもマナの意思。
生や死と言う括りをする事が、そもそも間違いなのでは無いだろうか。
鼻に緑の匂いが通る。
目を開けば、変わらないウユキチの広大な地平が広がっているだろう。
朝露に濡れる草木。緑の葉音が擦れ合いながら、まばゆい光を奏でていく。
深く香る土の上で、生命と生命の営みが繰り返される。小高い岡の上では、じゃれあう若い家族の声が、暖かい風に乗り耳に留まる。
閉じた瞳の裏に、今も鮮明さを失う事無く映し出される情景は、青や緑の柔らかな淡い色彩を纏って、夢と現実の境界線を消してゆく。
夢うつつに、レムの家族を想い起こし、寝息が静かに旋律を唄う。
胸の鼓動を肌で確かに感じながら、自分もマナの一部である事を認識させてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!