苦情受け付け係

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「B市は変わりますかね?」  B市の職員を見送った職員は上司に質問した。上司は首を横に振り、 「いや・・・。人の話を聞くというのも単純に見えて難しいものだ。きっと、今までと大差ないだろう。お前もそう思うだろう?」 「はい」  上司の問いかけに、無表情な彼は短く返事をした。 「さて、今日も最後の仕事をしますか」  そう言うと、職員は彼の背中にあるボタンを押した。  すると、彼の背中が割れた。中には細かい電子部品が詰まっていた。職員は背中のUSB挿入口にコードを差し込み市のパソコンで機能に異常がないかを確認しだした。そう簡単に壊れてしまっては困るから一日一回の定期点検は欠かさない。  何せ、彼はA市が予算を掛けて創ったロボットなのだから。 「さあ、これで、もう大丈夫だ」  職員はコードを抜くと彼の背中の蓋を閉じた。 「明日もまた市民の苦情を聞くだけ聞いてやれよ。そうすれば、連中は成果が出ようが、出まいが満足して帰っていくのだから」 「はい」  彼は相変わらず無表情のままで短く返事をするのだった。
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