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私はB市で働く職員。配属された部署は『苦情受け付け係』。市民とより密接な関係を築けるよう、新しく設けられた部署だ。仕事は至って簡単。市民の様々な苦情を聞き、実現が可能ならば市長に連絡を入れ、市の環境整備に役立てる。
もっとも、実現が可能なことは限られている。その為、苦情受け付け係の評判は、私が思っていたほど、よろしくない。市民はどうも、何でも相談にのってくれる部署と勘違いしているらしく、実現できないことを知ると、市民の不満はかえって膨れあがった。
市民の不満の責任。それは、当然のことながら、末端である苦情受け付け係に降りかかる。市民からは無能や税金ドロボーと罵られ、不満を解消できないことを上司から叱られる。そんな毎日を、私は送っていた。
ある日のことだ。隣町のA市にも、同じ苦情受け付け係があることを知った。そこは、B市とは違い上手いこと、機能しているそうだ。どういうことなのか、システムは私達の町とそう変わらないはずなのに。同じ方針ならば、不満を抱える市民が現れてもおかしくないはずだ。
私は不思議に思いながらも、A市を見習おうと研修という形で、A市の苦情受け付け係。その様子を見ることにした。
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