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「姉ちゃん!!」 怒りに任せて開いた居間の扉がバーーンと派手な音をたてる。 扉の向こうには悪の権化、俺の姉がいた。 「おはよう可愛い弟よ。今日もダルいわ眠いわ面倒くさいわでひとつとしてメリットのない爽やかな朝がやって来たぞ」 「全力で朝を否定するな駄目人間!」 「とうっ☆」 可愛らしい掛け声と共に宙に放たれた石の灰皿が俺の頭めがけてまっすぐに飛んでくる。 避けなければ死ぬので死ぬ気で避けると、ゴガァと言うおよそ日常で聞きたくない音が背後の壁で炸裂した。 「可愛い掛け声なんかに騙されねー!『可愛い弟』に灰皿を投げてはいけません!つか今完全に殺る気だっただろ!」 「ソンナコトナイヨ☆」 「棒読み!っじゃなくて、お前また俺の目覚まし止めやがったな!」 そうなのだ。 命の危機に面して忘れかけていたが、俺はこれについて文句をいいに来たのだ。 俺は目覚まし時計派である。 携帯のアラームで起きられないわけではないのだが、携帯アラーム特有のあの電子音で温く起きるのが嫌なのだ。 目覚まし時計の、それも昔なつかしベル式の、ジリリリリと言うけたたましい音で跳ね起きたい。 だから目覚ましには相当のことでもない限り携帯のアラームを使わない。 しかし俺は今日携帯アラームの音楽で目をさましている。 何故か。 俺が目覚ましではないところで携帯のアラームを活用しているからである。 『家を出る時間』 これが先程鳴ったアラームのタイトルである。 朝の定番、「うそ、もうこんな時間?!」を防ぐためにかけられたアラームだ。 あの音楽を携帯がならしたら、家を出る。 そうすればうっかり遅刻なんてことは大体防げるのだ。 だがしかし、しかしである。 目覚ましを〔何者かの悪意によって〕止められてしまい、このアラームで目を醒ました場合。 どう考えても、否、考えなくても。 遅刻するのである。 学校に。
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