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髪の長い、小柄な、女の子が。 それが、歩道橋の手すりから身をのりだし、今まさに、落下しようとしていた。 俺が固まっていたのなんかほんの数瞬で、一秒足らずの出来事で、けれど一分一秒どころか一瞬一秒を争うこの状況では致命的なミスのように思えてならなかった。 ならなかったし、実際そうだっただろう。 少女がギリギリの均衡を崩し、グラリと手摺の外側に揺らぐ。 おいおいおいおいちょっと待ってくれ、そんなん落っこちるに決まってんじゃねーかふざけんな待てって俺が、今。 間に合うなんて思っておらず、間に合わないなんて思いたくなかった。 その女の子が自分で落ちようとしたのか、それとも誤ってああなったのかなんて知ったことではないけれど、今ここに居るんだからあの娘を助けなければいけないと義務的に思う。 だから走った。 何だか分からないけれど汗が吹き出て足が縺れて息が切れて動悸が不全でこれから人一人助けよーってのにちっとも格好よくなんかなくて、脳内ではああくそこんないきなりの衝撃展開ついていけるか、起承転結の承を抜かすな馬鹿野郎とか訳の分からないことを考えていた。 そして。
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