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小さい頃の私は、それはもう変わった子だと称されていた。近所で、ではなくもっと近い場所でだ。そりゃ近所からも変わった子だと言われていたけど、そんなのもっと近いたち位置の人、つまりは家族から言われるのに比べれば風の噂みたいな程度だ。
私は生まれたときから、少し不思議な体質をしていた。それが前述した変わった子だと言われる所以にもなるのだけど、でもこの町にくるまで私は自分がそこまで変わっているとは思わなかった。
ただ、普通の人より目がいい程度だと思っていた。なんせ、人には見えない何かが見えるくらいの事だったのだから。
親がいうに、道端で犬を見かけたのが始まりだった。
あそこにわんわんがいるよ、幼い私がそう言って指を指したのだが、母には何も見えなかったそうだ。
それ以降、私は誰にも見えない何かを見ては、指差していた。
母は、はじめは小さい頃にありがちな、架空のお友達かとも思ったらしいが、しかしそれにしては私が見る相手が多種多様だった。
犬だったり、猫だったり、子供だと思ったら老人だったり。
「あなた、この子…」
「ああ、何てことだ」
気味が悪い。
両親は私に向かいそう言った。
それから私は母親に連れられて、病院にいったりしたが、それがなおることはなかった。
つまり私は、俗にいう霊感が高い人間らしく、幽霊が見えていたのだ。それも、実際に生きている人間と遜色なく目に写るため、その区別がつかなかった。
だからか私には昔から友達がいなかった。そんな目があったからではなく、私自身があまり他人を信じられなかったのだ。
生きているか死んでいるか区別もつかない他人に、信用もくそもないと思っていたのだ。
「まあそれは昔の話で、今ではちゃんと区別もつきますし、こうして他人との交流も人並みにしてますけどね」
私はそんな過去話をし終えて、そう区切った。見るとこの部屋にいる三人がそれぞれ異なる顔色をしている。
「まあ私は何回か聞いたことのある話だからね」
顔色が全く変わっていないのは、私の親友である麻生芽愛(あそうめあ)。可愛らしい容姿に人当たりがよく面倒見がいい彼女は男女問わず人気者で、私もあやかりたいくらいモテるお人だ。
「しかしそれほんとの話か?」
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