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全く信じていないという顔をしているのは御倪寿樹(みぎわとしき)くん。私を含めた四人の中で唯一の三年生。実質的なリーダーは彼ですね。情報通で優等生な彼だけど、実はかなりしたたかで、この部屋も彼のつてで手に入れたようなものなのですよ。
ああちなみにここは「文芸部」でここにいるみんなは一応文芸部員です。だから彼が部長ということになります。
「ほ、ほんとなら少し怖い話ですね」
少し怖がっているのは、木下幹也(きのしたみきや)くん。私と芽愛の一つ下で一年生の男の子。この子は少し怪談とかが苦手で、こういう話を聞こうとはしないのですが、まあここだけの話、彼が私の過去を知りたがったから話したわけで、聴かないのはおかしいと思ったからだろう。
「えーと、みきやん? 一応言っておくと由香の話は本当だよ? なんせ去年の修学旅行はスゴかったんだから」
「それはどんな感じに?」
「由香の指示のもとで写真を撮ると、それはもう言葉にするのも憚るような写真が…」
「あー! いいですいいです! それ以上言わなくて!」
よっぽど怖い話が嫌なのか幹也くんはついに耳を塞いだ。なんか私のことを怖がっているみたいで少し失礼ですよね。
「まあそういうわけで由香の話は大体本当だよ。まあ証拠は心霊写真くらいなものだけど」
「…ふーん」
寿樹くんは納得いかないような顔をしていましたが、特に口にはせずに腕を組んで黙り込んだ。
「まあこんなのを証明したところで、得することなんか何もないんですけどね」
これは事実。むしろ実害あって一利なしですね。
「ところで、今日まーちんは?」
芽愛が幹也くんに向かってそう言った。幹也くんはそういえば言っていなかった、というような顔をしてから口を開いた。
「あいつは今日バイトですね。明日は来ると思いますけど」
「まーちんは相変わらず勤勉少女だねぇ」
ちなみにまーちんと呼ばれているのは、いまここにいない五人目の部員を指す。深張真綾(みはりまあや)。それがまーちんの本名で、一年生の女の子だ。
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