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 真綾ちゃんは幹也くんの幼馴染みの腐れ縁で、小学校から今に至るまでずっと同じクラスだったとか。うん、だからこそのあの漫才のようなやり取りにも納得がいく。 「さて、そろそろ時間ですね」 「ん? 由香も今日何かあるの?」 「はい。いつも通りです」 「お仕事か。大変だね、いつも」 「まあでもやりがいがありますからね。それに私はこの町が好きですから」  私は少し伸びをしてから寿樹くんに向き直る。 「と、言うわけで部長。私、斎藤由香はこれにて早退させていただきます」 「おう。またな由香ちゃん」 「先輩、また明日」 「うん、幹也くんもまた明日ですね」  全員に挨拶をしてから、私は少し急ぎ足で学校をあとにする。  携帯で時間を確認すると、ちょっといつもよりおしているのがわかる。  うーん、いつもあの集まりは楽しいからこうしてギリギリになってしまいますね。まあ厳密に集合時間を決められているわけではないので、怒られるわけではない。 「おう、由香ちゃん! 今日もまた可愛いねぇ!」  モール型の商店街に差し掛かると、顔見知りの八百屋のおじさんに声をかけられる。 「ありがとうございます」  私は軽く手を振るだけにとどめて先を急ぐ。  商店街を抜け少し閑散とした通りに出る。少しすると登り階段がみえ、その先に鳥居がみえる。その神社を通りすぎてすぐに私の目的地がある。  古い五階建て建物だが、そこは私の目にはどの建物よりも堅固な建物に見えてしまう。なんせここには町長が住んでいるのだ。 「ただいま戻りました」  挨拶をしながら中に入るが、しかし返事はない。多分聞こえていないんだろうと思い、私は奥に歩いていく。 「神流さん?」  奥の部屋を覗く感じで顔を出し、この家の家主の名を呼んでみる。 「ああ、お帰りなさい、由香さん」 「いるなら返事をしてくださいよ」 「どうもすみません」  謝っているが、この人は多分反省などしていないんですよ。だってこのやり取りはもう何百回と繰り返してきましたから。 「それで、今日は神流さんだけですか?」 「いえ、御庭(みにわ)さんがいま一旦家の方へ戻っています。なにやら忘れ物をしたようですね」 「忘れ物ですか?」 「ええ、彼女にはなければならないものですね」
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