おはよう

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どうやら俺は事故に遭い、あの日から数週間、ずっと眠ったままだったらしい。 もしかすると起きないかもと、そう言われたんだと、両親は涙ながらに俺に訴えた。 本当に、よかったと。 ようやく起き上がれるようになった日。 病室のソファーの上に置かれた、そういえば目覚めた日も袋から中途半端に出された状態で、 今はパッケージに片付けられていた、どこか見覚えのあるような、そんな気がする枕が目に入った。 俺の物でも、彼の愛用の品でも多分ない。 両親の物でも、きっとない。 どこに置いてあった訳でも無い。 そんなそれに、 『もうあれは必要ないな』と、 何故かそう思った。 「どうするんだ?その枕」 どうしたんだ?よりも、その言葉が先に出てきた。 「返品する。まだぎりでクーリングオフ利くと思うし。無理だったら捨てるよ」 「それならよかった」 自分でもよく分からないけれど、そうするのがとにかく1番だと思った。 戻りたい日はもう無い。 「……ん?」 「どうかしたか?」 何で、そんな考えが浮かんだんだろう。 思わず呟いた俺に元秋が尋ねる。 「いや、何でもないよ」 そう、何でもない。 妙な考えは、眠っている間に変な夢でも見たんだろう。 過去に戻りたいなんて、俺は思わない。 俺たちにあるのは、希望や期待や、そういった物だ。 これからの日々が、どうか彼と共に、1日でも長く続きますように。 俺はそれだけを祈る。
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