ライアー

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「さっきから何で笑ってんの」 「可愛い侑李を思い出して」 わざと、嘘をついてみた。 「もう慧なんか知らないっ」 「嘘だよ。大貴が可愛くて笑った」 「それもどうせ嘘でしょ?」 「…うん。嘘だよ」 真実も嘘。嘘も真実。 「慧はさ、侑李が好きなの?」 「好きだよ。恋人なんだから」 「じゃあ、俺はなんなの?」 「なんだろうね。大切な人かな」 大貴は、花に視線を移す。 いや、もしかしたら窓の外かもしれない。 …どっちでもいいんだけど。 「慧といられるだけで幸せだからいっかあ」 独り言のように大貴は呟く。 「大貴は、素直だね。羨ましいくらいに」 「慧が嘘つきすぎなだけ」 誰も嘘に紛れた真実に気がつかないだけ。
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