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「大貴、好きだよ」
「また嘘でしょ?嘘つき慧」
「嘘つきな俺は、嫌い?」
大貴は、一呼吸あけて返事をした。
「嘘つきは、嫌い。…慧は、好き」
俺は、返事の代わりに大貴を抱きしめる。
「慧は、俺が嫌い?」
「うん。嫌い。…嘘だけど」
侑李から届いた花が視界に入る。
俺の病室にではなく、
ナースステーションに届けられた花。
侑李が病室に来るのは、
一ヶ月に一回か二回。
俺がいない間、侑李が
何をしているのかはわからない。
干渉する気もないし、
知りたいとも思わないけど。
だって俺は、侑李が嫌いだから。
…もちろん嘘だけど。
「ずっと一緒にいたいな」
俺は、大貴の言葉を聞いてないふりをした。
大貴を抱きしめたまま、
聞こえないくらいの声で呟く。
「俺が愛してるのは、大貴だけだよ」
嘘の中に紛れた真実。
それを探し出すことができたなら。
それは、きっと…。
END
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