第1章 生憎

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「解熱剤だよ。まだ41度9分の熱があるからこれ飲んで冷まさないと」 たしかに熱があるみたいだ。 まだ意識がしっかりしておらず、よく分からないが。 「からだ起こすよ。これ持って。………はい水。これ飲めばだいぶ楽になるはずだから」 そう言い、髪木は腕をわたしの背中にまわして上体を起こす。 楽に起き上がれる。 かなり手慣れた手つきで、わたしの体を座位の体制にうつした。 そして錠剤の薬と水の入ったコップを渡されるが、からだに力がまったく入らない。 コップが重くて持てない。 まるで神経が麻痺してるように。 それに、意識がやはり薄く、髪木の言ってることを理解できてるかどうかも曖昧なところだった。 「力が入らないんだね。じゃあ薬を口にふくんで。僕がコップ持って飲ませてあげるから」 だから力入らないんだって。わたしの手の中にある薬を口にはこぶ事すらできない。 唾を飲み込むのも一苦労で、ちゃんと薬を飲み込める自信もない。 口の中がねばついて気持ちわるく、少し吐き気がする。
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