第1章 生憎

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髪木の体は大きく後ろに仰[の]け反りかえり、力を蓄える。 そして反動をつけ、いっきにわたしの顔面に頭突きをしてきた!! わたしは瞬時に全身に力を入れ、頭で体を硬くするイメージを湧かす。 そして強烈な頭突きがわたしの顔面にヒットした瞬間、内なる力を解き放つ。 バコッ! ……………。 い、痛くない! 髪木の体が呻[うめ]き声を上げて激しくのたうち回る。 確かにそれは当たった。 しかし鈍い音がしただけで傷ひとつ付かず、それどころか痛みひとつ感じられず絶体絶命の危機を回避した。 完璧だった。 この上なく完璧だった。 肋骨を折られたことが馬鹿みたいに。 しかし安心はしていられないのだった。 倒れていた髪木の体はすぐに起き上がり、再びわたしへの敵意の目を向ける。 防御しただけだから当然といえば当然だが。 防御が完璧に成功したとはいえ、それだけじゃ現状を変えることはやはり無理だった。 何か髪木の体の動きを止められる手段を加えなければならない。 だけど、わたしは今肋骨を骨折し息をするだけでも激痛で意識を失いそうになる始末だ。 これ以上のことを一体何が出来る。 せめて回復術でも使って骨折を治さなければ話にならない。 一体どうすれば………。 バタンッ! すると、突然ドアの開く音がした!!
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