第1章 生憎

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涙が滝のように流れ出てきた。 いまにも張り裂けそうだった膨大な数の不安や叫びがいっきに解放されていき、声として溢れ出てくる。 「良かった、わたし良かった。良かった、良かった、良かった、良かった、良かった!!ほんとに良かった!!わたし頑張って、頭がおかしくないなるくらい凄い頑張って」 自然と言葉があふれ出てしまう。 この人はそんなわたしの言葉をしっかり聞いてくれ、とても力強くわたしを抱き締めてくれる。 「うん。うん。頑張ったわ。あなたは本当によく頑張ってくれた」 もうその言葉はわたしにとって表現のしようのないほど嬉しいものだった。 なにもかもの不安が吹き飛んでしまう、そんな言葉だった。 「もう何回も諦めかけて、何度も死にかけて。ほんともう駄目なんじゃないかって、何度も思って。だれかに助けてもらいたくてもだれもいなくて、必死で助けを呼ぼうとしたのに助けなんか呼べなくて。助けようとしたコイツはこんなになっちゃうし。でも負けたりしたら駄目なんだって、必死で自分にいい聞かせて。 「それで、それで、少しでも気を抜いたりなんかしたら自殺しちゃいそうで。もういいかなって何度も思っちゃって。すごく不安だったし、すごく恐かったし、すごく辛かったし、すごく苦しかったし、すごく痛たかったし、すごく逃げたかったし、すごく死にたかった!! 「でも………でもそんなときあなたが助けに来てくれて、良かった!!ほんとに良かった!!すごく嬉しかった!!やっとわたしは救われたんだって思って………。もうまったく涙が止まらない」 「うん。私も良かったわよ。とても良かった郡山さんが生きていてくれて」 「ん~ん。だってわたし神様だし、すごく辛かったけどあなたに会えてほんとに嬉しい!!」 もはや支離滅裂すぎて、わたし自身でも何がいいたいのかさっぱり分からなかった。 だけど、これだけは言いたい。 命を助けてもらった身として。 命の恩人に対してこれだけは言いたい。 それだけは確かだった。 「わたしを助けてくれて、ほんとにありがとう」
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