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「分かったわ。じゃあそのためにひとつ質問いいかしら、馨さん」
「ええ、なんでも訊いて」
「『憑り代』って漢字。これなんて読むの?わたし漢字苦手で」
「『よりしろ』よ。『依り代』とか、中の『り』を抜いて書いたりすることもあるけど。憑り代は神や霊などが依[よ]り憑[つ]くものを指していて、本来は人に限らず森羅万象が憑り代の対象となるの。
「例えば山の神や海の神などは石や樹木などに依り憑いて人は注連縄[しめなわ]を飾ったりするのだけど、それはよく神社とかで見たことあると思う」
確かに、注連縄ならよく見かける。
「つまりわたしはその注連縄を飾られた石や樹木みたいなものになったていうことかしら」
「端的に言えばそんなところかな。人の憑り代のときには巫[かんなぎ]、または依巫[よりまし]と言うの。神社によっても言い方は変わるけど、まぁつまりはお巫女さんのこと。ただ、今知る限りではどうやらあなたはただのお巫女さんとは少し違うみたいなのね。それは特別な何かで、通常とは桁違いなもの。それを教えてもらたいのよ」
そして、わたしはたんたんとさっきまでの出来事を話していき、途中髪木の助けも借りながらなんとか一通りの説明を終える。
そして。
「『天八咫祖命』と名乗れって言われたわ」
馨さんは顔色一つ変えることはなかった。
驚いているようではあるが、眉がわずかに動いた程度である。
「ほんとに、そう、言われたのね?」
「ええ、確かにそう言われたわ。聞き間違えなんかあり得ない。髪木もすごく驚いてたけど、これは一体……」
「『天八咫祖命』。これは『アメノヤタムチノミコト』って読むのよ。神につけられる名前なの。
「天[アメ]は属性を表していて天津神[あまつがみ]であることか、若[も]しくは高天原[たかあまはら]に関係している事を指すの。
「八咫[ヤタ]は八咫鏡[やたかがみ]のことかしら。この八咫鏡というのは八尺瓊勾玉[ヤサカニノマガタマ]や天叢雲剣[アメノムラクモノツルギ]と並ぶ、三種の神器[サンシュノシンギ・ミクサノカムダカラ]のうちの一つに数えられるお宝よ」
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