第2章 番いの弱者

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「そして祖[ムチ]は『高貴な』という意味をもっていて、命[ミコト]は神号で何かしらの命[めい]を受けた神を指し示すの。どうしてそのような名前の形をとったのか私にも分からないけど、それらのことからして確かにあなたに依り憑いたのは天照大御神[アマテラスオオミカミ]でほぼ間違いない、かな」 「天照大御神!えっと…………誰だっけ?」 「日本神話に登場する神よ。 「太陽を神格化した神といわれる皇室の祖神[そしん]の一柱よ。天照大御神は全国各地の神明神社[しんめいじんじゃ]に祀られていて、特に伊勢の総本社には三種の神器のうちの八咫鏡[やたかがみ]を憑り代として安置されている」 「だから『天八咫祖命』ってことね。でも総本社に祀られてるのだったらなんでわたしなんかに?」 「ええ、つまりそこなのよ。本来その総本社にある八咫鏡を憑り代としているはずの天照[あまてる]が何故かあなたを憑り代にしてしまっているのだから、ほんとびっくりよね」 「原因は分からないのかしら?」 馨さんは首を横にふる。 「それに、知ってるかしら。実は、天照大御神は卑弥呼であるという説が存在することを」 「卑弥呼ってあの卑弥呼のこと?」 「そうよ。天照大御神と卑弥呼の生きていた時代がどうやら一致するらしくてね、卑弥呼は『日巫女』や『日御子』などと表されることもあって、それぞれ『太陽に仕える巫女』、『太陽神の御子』という意味をもっていたりする。そして天照大御神も同様、別名として『大日メ貴[オオヒルメノムチ]』という呼び名があって、この中のヒルメというのは『日の女』、つまりは太陽に仕える巫女を意味しているの。 「まだ他にも記録が重なるところは沢山あって、だから私は天照大御神と卑弥呼が同一人物であるという説は正しいと考えていて。 「そして私が言いたいことは、あなたがもしかしたら二代目卑弥呼なんじゃないかなって思ったりしたことよ」
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