第2章 番いの弱者

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ここで髪木が割って入る。 「ねぇお姉ちゃん、もう少し分かりやすく説明してあげてよ。そんなにも話それたら僕もわけ分からなくなってきちゃうって」 ? 「髪木はお姉ちゃんて馨さんのこと呼んでるんだ」 「ええ、実際は兄弟というより親子みたいなものだけどね」 「お姉ちゃん、僕の話きいてる?」 「あら夜流、いつもは私の前では黙りこくってるくせに、今日は口数が随分と多いのね。もしかして可愛い女の子を前にしてあがってたりする?」 「ち、ち、違うよそんなの!!た、ただもうちょっと分かりやすく説明してあげたらいいんじゃないかなって」 「へぇ~、それで?」 「『それで?』じゃないよ!!」 そうしてるうちにもわたしたちは馨さんの家に到着し、ひとまず上がらせてもらうことになった。 馨さんの家は30階建ての高級マンションで、部屋はその最上階である。 「うわ~、いい香り」 部屋にお邪魔させてもらうと、玄関からはアロマのいい香りがする見事なもの。 加えて床から天井まであらゆる所で埃[ほこり]ひとつ見られないとても綺麗なそれで、すぎるくらいに生活感がなく逆に少し奇妙な部屋でもあった。 いや、埃がたまっていないのならそれはそれで生活感があるとも言えるのか。 キッチンにダイニングにリビング、それにベッドルーム、そして『入室禁止』の札が掛けられた扉がひとつ。 ここまで広いとかえって落ち着かない。 「まあ何もないけど、自由に使ってもらって結構よ。だけど、入室禁止の部屋には入らないでね。扉を開けるだけも駄目よ。絶対に」 「ええ、分かったわ」 当然、さすがのわたしでも興味本位で覗き見するようなことはしない。 ましてや、命の恩人である馨さんに対してそんな恩を仇で返すようなこと、わたしにできるはずないのだから。 ただ、チャンスは窺ってみるが………。 「今日はもう何もせず、すぐに寝ることにしましょ、郡山さん」 「でも今後のわたしについての話は?」
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