第2章 番いの弱者

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髪木だけでなく馨さんにも昨日言われたことだけれど、ここまでわたしが冷静になれる人間だとは自分でも思わなかった。 髪木曰く、すでに昨日の薬の効果はきれているらしい。 普段の生活では気付けない自分の側面なのかもしれない。 頭が真っ白になって、ただ鈍感になってしまってるだけなんてことはないみたいだし。 まぁそれならそれで利用させてもらうばかりだが。 「昨日は天照大御神についての話を聞いたはずだよね。僕も思うよ、飛鳥様に憑いているのは天照大御神で間違いない。 「神様や妖怪、霊などが人に依り憑くためには、ある程度の大きさをもつ器のようなものが必要なんだ。その大きさは人それぞれに違っていて、まったく持っていない人もいれば、とんでもなく大きなものを持っている人もいる。 「それに憑く神様やらなんやらが偉大であればあるほど、強ければ強いほど、悪性であればあるほど憑かれる人は命の危険にさらされる。 「憑り代をもたない神様や妖怪、霊は勝手に人のなかに入り込んできてお構いなく人を憑り代にしてしまうこともあってね。 「運がわるければ負担に耐えきれず絶命さえさせられてしまうこともあるんだ。 「逆に生きていられたとしても、その人の全ての精神をのっとられて暴走してしまう事もあるんだよね。だけど、器たるものが相対的に大きかった場合には占領率が1%にしかならないことだってある。 「力関係が上回ってさえいれば自分に憑いたものに命令を出すことすら出来て、完璧な主従関係が発生することだってあるよ。 「別に憑き物の立場が弱いとは限らないけど、それが神様であれば強制ではなく契[ちぎ]りを結ぶことになって、妖怪や霊、波旬[はじゅん]であれば強制となることが多いんだ。 「あっ、波旬っていうのは所謂[いわゆる]悪魔のことで、業魔[ごうま]や悪鬼[あっき]など、魔術の根幹となる存在がこれに当てはまるかな」 「それならわたしの場合はどうなの。力関係的には」 「飛鳥様の場合は未知だよ」 「未知……ね」 「ただ、訓練さえ積めばある程度まで力を使えるようになるだろうし、普段はいつも通りの自分でいられて問題もないみたいだしね」 「それはこの神様との関係が良好ということかしら」 「う~ん、良好かどうか分からないけど、とにかく飛鳥様の持つ器たるものの大きさは桁外れのようだからね、さほど問題はないことだと思ってるよ」
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