第2章 番いの弱者

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「飛鳥様も憑り代となっているように僕だって超自然的存在の憑り代となっているんだ。 「ただ、それは飛鳥様のような神様とかじゃなくて僕の場合は妖怪や悪霊などといった悪しき物と契りを交していてね。その霊力を使って昨日は精神の一部を飛鳥様の脳に侵入させ、一次運動野と松果体を少しいじらせてもらったんだよ。 「他にも幾つかの妖怪や霊と契りを交していて、昨日に飛鳥様に見せたのは『抜け首』というものだよ。抜け首は『ろくろ首』の一種なんだけど、首がぬけて夜にさまよい、そして人を襲って血を吸うといった妖怪譚[ようかいたん]たるものが熊本県やさぬき市などに伝承されている妖怪で、その特性を家賃代わりとして使わせてもらってるってこと。 「だから昨日は飛鳥様にビンタされて首が吹っ飛んでも生きていられたのはそのお陰。僕は妖怪・霊使いでね、人は訓練を積むか若[も]しくは体内にそれらを宿すことによって見えるようになる。そして飛鳥様の場合は神様だから、すべての超自然的存在を見ることができるんだ。例えばあそこ。霊が一体、立ってるでしょ」 そう言い、髪木はわたしたちのいるファミレスと道を挟んだコンビ ニを指差す。 「………?いや、わたしには見えないけど」 「コンビニの入り口のあたりだよ。交通事故で死んだのかな、首の折れた霊がずっと立ってるけど」 首の折れたって………。 「う~ん、わたしは目がいい方だけど、やっぱり見えないわ」 「そう、まぁそうだよね。昨日の今日ではさすがに力の定着は厳しいよね。神様の力が体と精神にしっかり定着すれば飛鳥様も見えるようになるよ」 髪木が話を戻す。 「まぁ僕が毎日電車のなかで優先座席に座ってることは知ってるよね。 「電車のなかというのは元々人間の様々な考えや感情が入りまじっている場所で、神様や妖怪、霊、波旬の類[たぐい]はそのようなところに寄りつこうとするんだ。 「そういうところほど超自然的存在はエネルギー消費しにくく、また色々な人が毎日乗ってくる電車は多くの超自然的存在にとって憑り代の巣窟で選び放題なわけだよ」
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