第1章 生憎

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「おはようございます老川先生。なにか用ですか」 「用があるから呼び出したのよ。郡山さんには窓ガラスを割った代償として色々働いてもらわないといけないから。たとえ故意に割ったのでなくてもね」 あれ、今日は説教はなし? それなら助かる。 「私、少し用事が出来ちゃって朝のホームルームに出られないのよ」 「あぁ、それなら適当にやっておきますよ。点呼とるくらいでしょ」 「いやぁ今日は違うのよ。実は転校生がくることになっててねぇ、もうすぐここに来ると思うけど、私の代わりにその転校生をクラスのみんなに紹介してほしいの。お願いするわ」 「転校生ですか?分かりました。適当にやっときます」 「そう、よろしくね。あっ、来たわ。こちら今日から1年B組で一緒に勉強することになった、髪木 夜流[かみき よる]君よ」 目を疑った。 その子は毎朝電車で見かける、必ず優先座席を占領して決して譲らない、あの貧弱な男の子だった。 「こちら郡山飛鳥さん。教室までの案内とクラスのみんなへの紹介はこの子がしてくれるから。あと分からないことがあったら何でも訊いてね、この子に。じゃあ私は用事済ませてくるからあとよろしくね」 全くどういうこと?いままでだって毎朝この学校の制服をきて毎朝登校してたじゃない!? なのになんで今になって転校よ。 あまり関わりたくないなぁ、ちょっとヤバそうな子だし。 だれかに代わってもらうのも有りね。 「よろしくお願いします、郡山さん」 「気安く呼ぶな!!」 「わ!!………え💧どう呼べばいいんですか?」 「郡山様とお呼び」 「あ、はい、分かりました郡山様。…………?」 「ハテナは消しなさい」 「はい」 「じゃあ付いてきて。案内するから」 「はい、郡山様」 う~ん、意外に従順ね。 こいつは使えるかも(笑)。 「よし、すぐ呼ぶから教室のそとで待ってて」 そう言ってわたしだけ先に教室に入り、ドラマやアニメでよく見るシチュエーションを作ってみる。 「みんな席に座りなさい」 「アスカ、なにやってんだ?」 「いいから、座れバカどもめが!!」 「うわっ、いきなりキレた!」 「今日はセンコウのヤツ、用事あるとか言ってホームルームすっぽかしやがったから、代わりにわたしがすることになったわ。とにかくみんな座りなさい!」
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