第1章 生憎

7/33
前へ
/230ページ
次へ
クラスの人数は確か41人で、入学してからまだ三週間しか経ってないから名前はほとんど覚えてない。 顔を覚えることは得意なのだが、名前ときたらいくら必死で覚えようと頑張ってもまったく頭に入ってこないのだ。 そんな中わたしはみなの前に立って上から目線なのだ。 さぞ、こんなわたしに命令されるのは苛立ちを覚えることだろう。 「出席点呼はめんどくさいから省かせてもらうわ。今日は全員出席ってことで。えーっと、今日、実は転校生がきています」 クラスがざわつく。 「じゃあ入ってきて!」 そして、わたしの呼び掛けにより教室の扉をあけ、 そして髪木が中に入って…………。 ………こない!? 「髪木!?どうしたの?入ってきなよ!」 「おいアスカ!!どうなってるんだ!?」 「うるさいわね、お前は黙ってて」 「どうしたんだろう、気付いてないのかな」 わたしは教室の入り口までいき扉を開けてみる。 すると、髪木は壁にもたれた状態で待っていた。 やっぱり気付いていなかったみたいだ。 「髪木、入って。紹介するから」 「あっ、はい。郡山様」 「はいっ、こちらが今日、転校してきた髪木夜流ってヤツです。漢字は~」 髪木が黒板に自分の名前をかく。 「髪木夜流です。よろしくお願いします」 「分からないことがあったらあそこに座ってるぶっきらぼうなオッサンに訊いてね」 と言って新崎を指差す。 「なんで……💧」 「そしたら髪木、うしろの空いてる席に座ってちょうだい。そこがあんたの席みたいだから」 「はい、郡山様」 「お前、さっそく転校生を手なずけたのか!?」 「なに言ってんの。これは髪木自身から出てきた謙遜の表れだし」 「絶対に嘘だよなそれ。様はおかしいだろ様は」 「ん~確かにそうかも。うん、響きがいまいち郡山と合ってないような」 「いや、そこじゃなくて……」 「そう、飛鳥様と呼びなさい、髪木」 「はい、飛鳥様」 「やっぱ手なずけてるじゃん!!」 まぁこんな感じか。 やっぱり髪木については少し気にはなるけど、あんまり調べるのはよくないような気がする。 適当に新崎にでも任せておけばいいだろう。 そして、いつも通りの時間が過ぎていき、放課後になって空手の練習をし、あっという間に夕方になった。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加