だから私は描くのです

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「僕は夢でもみているのだろうか?」 「さぁね、私も貴方がここにいる理由は分からない。なにか不思議な事が起こったのかしら」 「さっき絵本の中にいる。って言ったけど、君は?どうやら人間ではないようだけど」 「私はただの登場人物よ。この絵本を描いた私が登場する、私だけの物語」  彼女は僕の周りをくるくると飛んだ。そして指を振る。その瞬間、また景色が変わった。次は海の中だった。 「なにしたの?」 「ページを捲ったの。これは次のページよ。海の中の世界、私の想像だけで描いた、存在しない青の世界」  彼女は海の中を進んでいった。僕は後に付いていく、海の中の世界だと言うのに苦しくないし、水の抵抗が全くない。しかし、本当の海のように、光がゆらゆらと揺れている。 「貴方がこの世界から出るには、最後のページまで行く必要があるかもしれない。だから最後のページまで案内するわ」 「最後のページって、どれくらいで行けるの?」 「分からない」と彼女は無責任に言った。 「分からない?そんなに長いのかな?」 「そうじゃない」と彼女は呟いた。どこか悲しそうなその声は、僕の耳に重たく響いた。「まだ描き終えてない。私が意識を失っているから」
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