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「見たこともない?一度も?」
「そうただの一度もね。私、ずっと病院で生活していたから。身体が弱くてね。病室ではいつもカーテンがかかっていたし、開けても見る事は叶わない」
彼女は空中でくるくると丸を描くように周り、僕の目の前に浮遊する。
「貴方はある?みたこと」
「あるよ、毎日ね」
「それは羨ましい。一度でいいから本物を見てみたい。太陽を見て、眩しいと思いたいな」
彼女は急降下するように、地面すれすれを飛び、そして高く浮上した。
どれくらい歩いたかは分からないけど、目の前に落とし穴が現れた。しかし、その穴は大変小さく、落ちたとしても、片足が入るくらいだった。
「次のページはここを通るの、もうそろそろね、今のところの最終ページは」
彼女は落とし穴にすっぽりと入り、消えていった。僕はしゃがみ込み、穴の中を覗く、すると頭から吸い寄せられるように穴へ落ちていった。
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